柴さんは裁決で、正当な職務遂行であったため、お咎めなし。
念のため、会津からは土佐藩邸に見舞いの使者と医師を送ったのだという。
これに対して土佐藩も、最初に名乗らなかった麻田さんに落ち度があったとして、事は穏便に進んだらしい。
近藤さんの報告を受け、皆で安堵の息を吐く。
その時、部屋の外で、誰かが言葉を発する。
「局長、山崎です。
報告があります。
土佐藩、麻田時太郎が切腹を申し付けられ、死去いたしました。」
その言葉に部屋内の空気が一気に張り詰める。
「それで、山崎君。
詳細は…。」
「はい。
事が穏便に進んだと思われましたが、土佐藩は公武合体を支持している中、内部では土佐勤王党など、討幕を目論む勢力もあります。
公式的には穏便に事を進める姿勢であっても、当時麻田は逃走を図った上に後ろ傷を負ったため、士道不覚悟で切腹を申し付けられたのだと思われます。
ただいま、土佐藩士の一部では、土佐藩に不公平な処理と見なし、会津藩と新選組に報復をという者まであらわれているもようでございます。」
「そうか。
報告、ご苦労。」
「近藤さん、どうするんだい?」
土方さんが近藤さんに尋ねる。
「事の終結を見守るしかないだろう…。」


