「美奈さん!!
すごいです!!
未来は便利なものがいっぱいなんですね!!」
一通り文字を書いたり消したりを繰り返した総司。
わぁと子供のようにはしゃいでいた。
私は総司に差し出していた物を返してもらい、鞄にしまった。
「いい?
絶対に口外しちゃん駄目だよ?
今日、ここで、見たこと、聞いたことは!!」
「はい!!」
そう言い、総司はルンルンと部屋を出て行った。
私も、いつの間にか沈みかけてきた太陽を見て、慌てて勝手場へ向かったのだった。
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6月10日。
副長室で、隊務を終えた武田さんが報告をしていた。
報告を聞いた皆は渋い顔をしている。
それもそのはず、今回の情報は間違いで、明保野亭にいたのは池田屋には関わりのない土佐藩士であったのだ。
翌日、近藤さんから昨日の出来事を詳しく報告された
会津藩士である柴司(しばつかさ)が明保野亭に踏み込んだ時に逃げようとした武士を後ろから手槍で腰を突き、傷を負わせてしまったのだという。
直後、
「自分は浪士ではない、土佐藩士の麻田時太郎である。」
と名乗ったため、解放し、土佐藩邸に引き取らせたのだそうだ。
相手は幸いにも命に別状はないそう。


