鈴姫伝説 SideStory 番外編





 それを受け取って、お釣りを出す。





 そのとき、カサリと奇妙な感触が手を伝わって脳へと届く。




 不思議に思って、千円札をひっくり返すと、そこには小さな白い紙があった。




 なに、これ?




 その紙をゆっくり開くと、中にはメールアドレスが書いてあった。




 誰の?




 顔を上げれば、さっきの男の人がいる。




 もしかして、この人のヤツ?




「俺のメールアドレス、よかったら、メールちょうだい」





 それ、あたしに言ってますか?



 でも、隣の莉緒は忙しそうだし、あたしたち二人以外はまだ、売り子の当番じゃない。




 なにいってんの?



 この人。




 千に言われたことが脳裏に蘇る。




『売り子の人たち。




 誰かにメールアドレス渡されたり、聞かれたりしても、絶対断れ』と。





 だから。




「ごめんなさい、ムリです。




 うちではそういうのは、やっていません」




 そう言って、あたしは左手に持っていたお釣りと、その紙切れを男の人の手の中に押し込んだ。