「すみません」 莉緒に気を取られていたら、あたしの前にお客さんがいた。 慌てて、営業スマイルを作る。 「いらっしゃいませ。 なにがよろしいですか?」 目の前にいるのは、二十歳くらいの男の人で、髪を茶色く染め、眼鏡をしている。 「・・・・・・じゃあ、烏龍茶で」 「かしこまりました。 一つでよろしいですか?」 「・・・・・・はい」 ・・・・・・暗い人だな。 そう思いながらも、笑顔で男の人に烏龍茶を渡す。 「一本百七十円です」 「・・・・・・・・・・・・」 男の人はスッと、千円札を出した。