受付を済ませた加奈は、近くにある長いすに腰を下ろした。

 すると、すぐ後ろの席でぐずっている赤ちゃんの声を耳にする。



「もうすぐお姉ちゃんが来るからねぇ。

 いい子だから、我慢してねぇ」


 どうやら、その赤ちゃんの姉に当る子が治療を受けているらしい。

 母親が胸に抱いて優しく声をかけたり、高い高いをしたりして色々あやしている。


 しかし、泣き止みそうにない。




―――私、子供をあやすのが得意なんだよねぇ。


 小さく微笑んだ加奈は

「いない、いない、ばーっ!」

 と言って、勢いよく振り向いた。




「ぎゃぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」



 とたんに顔を真っ赤にして、火をつけたように大声で泣き出す赤ちゃん。

 けたたましい泣き声が、ロビー中に響く。



 母親は赤ちゃんをかばうように胸に抱いて、急いでその席を離れた。