唐突に、押し付けられた唇が、

僕のすべての思考を奪った。

その唇の柔らかささえ…随分、後にならないと…思い出せなかった。

「え……」

と、疑問の言葉だけが、僕の口から出た。

「伊藤だったら…いいよ」

彼女は、そう言うと、

ゆっくりと僕の首から、手を離し、

「あたしのメール知ってるよね。今までしてくれたことなんて、ないけど…」

麻衣はずっと微笑みながら、僕を見据え、


一度唇をつむぐと、

彼女は言った。

「本当は…ずっと伊藤のことが、好きだったんだよ」