心の裏側と素肌の境界線を越える為に

思考が飛ぶような口付け。

俺はしばらく気を失ったように、何も考えられなくなった。

片桐が唇を離しても、俺の唇はまだ震えていた。


だから、俺は気づかなかった。

片桐がじっと…俺の瞳の中を覗いていることに…。

「あなたは…不思議な人ね」

片桐は、優しく微笑んだ。

「え」

緩んだ…優しい笑顔に、俺は少し考える力を取り戻した。

片桐はゆっくりと、俺から離れ、少し項垂れた。

「多分…あなたもあたしは…本当は、こんな強引な人間じゃない。だけど…強引にしてしまう」

顔を上げると、さらに優しくなり、

「だって…。そうでないと、また無くしそうだから…大切なものを」



「!」

俺は、その時初めて…片桐本人を見たような気がした。