心の裏側と素肌の境界線を越える為に

「ごめん!構ってる暇がないんだ」

帰りの生徒でごった返す廊下を走りなから、

俺は待ち合わせ場所の渡り廊下に向かった。


さすがに、帰り道から外れている為、人がいない。

渡り廊下の手摺の前に、両手で鞄を持った…片桐がいた。


片桐は近づいてくる俺を気付き、体をこちらに向けた。

俺は駆け寄った。


「本当に待ってたんだ」

俺の言葉に、片桐は苦笑し、

「そんなことで…」

俺に近づくと、腕を絡めてきた。

「女は嘘をつかないわ」

173センチある俺よりも少し低い片桐は、上目遣いで微笑んだ。

その妖しさに、俺はさらに心を奪われていった。