心の裏側と素肌の境界線を越える為に

(上手いな…)

触れる前なのに、俺の片桐の唇に震えていた。

このキスは、初めてではない。

そんなことを考えながら、俺が目をつぶった。


その瞬間。


「太一!」

俺の後ろから、声がした。

その声に、片桐は口付けを止めた。


あと…数ミリで、触れあったのに。


俺が目を開けると、片桐は両腕を外し、

髪をかきあげながら、

ゆっくりと歩き出した。

すれ違う時は、片桐は言った。

「この続きがしたいなら…放課後、ここに来て」

前を見て、俺の方は見ずに、背を伸ばして歩いていく片桐。

俺は振り返り、片桐の後ろ姿を見送った。