心の裏側と素肌の境界線を越える為に

「!?」

俺の口から、好きという言葉を聞いた瞬間、

大きく見開いた片桐の目がやがて…ゆっくりと細められた。

その目に、俺は何も言えなくなった。

初めて見る目だった。


俺と哀れむような…獲物を狙うような…

何でもとれそうな異質な目。


だけど、それが気持ち悪いとは感じなかった。

ゾクッとくる程、美しいかった。


唾を飲み込んだ俺に気付き、片桐は笑った。

そして、今度はゆっくりと、俺に近づいてきた。

「あたしを好きになるって…本当に?」

「う、うん…」

なぜだろう…追いかけていたはずの俺が、

逆に追い詰められている。

無意識に、後退ろうとした俺は…動けなくなった。

片桐の両腕が、俺の首に絡まっていたからだ。