「え?」

聞こえなかったので、俺が聞き返すと、

正利はフェンスの網に指を入れ、握りしめた。

「ったくよ!」

フェンスを揺らすと指を離し、俺に振り向いた。

「言いたいことは、たくさんあるけどよ!まずは、一つ!」

正利はフェンスにもたれ、

「らしくないぜ。昨日、駅前で、片桐に声をかけただろう。普段は、奥手のお前がさ!」

正利は、吐き捨てるように言い、

「今朝来たら、クラスの女にきかれたよ。お前と片桐のことをさ。香川なんか…泣いてたぜ!ああ、畜生!羨ましいことだ!」

そこまで言った後、正利はフェンスから離れ、俺の目を見つめ、

「悔しいけど…お前は、モテんだよ。だから、片桐はやめておけ」