ピアノとドラム…。

ピアノができたら、何でもできるし、

需要の少ないドラムを叩けるようになっていたら、

太一がバンドをやりたいと思った時、どんな場合でも対応できる。

そんな状態を一年近く保っているのに、

肝心の太一がやろうと言わない。

それどころ…太一の心は、自分に向いていないかもしれない。

「馬鹿みたい…」

ドラムセットを見つめ、美佳は呟いた。

意気込んで買ったドラムセットも、虚しく見えてきた。

「買うんじゃなかった…」

ぽつりと呟いた時、

美佳の携帯が鳴った。