恋愛を癒すには、恋愛しかないのだろうか?

そんなことを、無意識の奥で俺が考えている頃。





家に帰った美佳は、二階にある自分の部屋でドラムを叩いていた。

部屋のほとんどを占領するドラムセットの真ん中で、激しくビートを刻んでいた。

正確にリズムを刻んでいたのに、

途中でバラバラになり、むちゃくちゃになった。

まるで憂さ晴らしのような音に、自分自身の苛立ちを感じた美佳は、スティックを置いた。

まだ反響するシンバルを止めることなく、甲高い音を鼓膜の奥で聴いていた。



「やっぱり…やらないのかな…」

美佳はドラムセットから抜け出すと、部屋の隅に追いやられたベッドに倒れ込んだ。