「そんなことを言うなよ。何か事情があるんだろうし」

そう言った後、俺は手を離した。

「年上とか…関係ないし。今は、クラスメイトだしな」

俺は頭をかくと、歩きだした。

「つまらんことを言うなよ」

少し吐き捨てるように言った俺の言い方に、

美佳の瞳に涙が滲んだ。

「お、おれは!」

美佳は離れていく俺の背中に、叫んだ。

「心配してるだけだ!」


俺は足を止めずに、後ろに向けて手だけを振った。



遠ざかっていく俺を、美佳は追いかけることができなかった。

ただ…本当にききたかった言葉だけを呟いた。


「好きなのか…片桐さんのことが…」


だけど、

その言葉が、俺に届くことはなかった。