少し話はもとに戻る。


彼女だった人に怒られて、とぼとぼと帰る道の途中、

俺は…閉まりかけた商店街で立ち止まった。


そこから、流れる音楽に心を奪われてしまったのだ。

その時の曲名を知るのは、大分先のことだけど…。


アル・クーパーのジョリー。

クインシー・ジョーンズの娘との悲哀を歌ったと言われる…この曲を聴いた時、

無意識に、俺の瞳から涙が流れた。


そして、いつのまにか…自転車に飛び乗り、こぎだしていたのだ。


まったく興味がなかった音楽に、

俺は動かされたのだ。