「そっか…」

片桐は…振り返ることもなく、

しばらく美佳が立っていたところを見つめていた。

彼女の言いたいことは、わかった。

どんなに、彼のことが好きなのかも。


それなのに…美佳には、悪いと思う気持ちが湧かなかった。


彼女の気持ちは痛いくらい、理解はした。

だけど、譲る気はなかった。

「そうなんだ…」

片桐は自分の胸を抱き締めて、目をつぶった。


自分では気付かないように、そうならないようにしていたのに、

美佳の告白で…逆に気付かされた。

「そっか…」

片桐は振り向くと、屋上の扉に向かって歩き出した。

不思議と…嫌とか、嫌悪感はなかった。

そんな気持ちを持ってしまった自分自身に対しても。

そのことに一番…驚いていた。