「遅れるんじゃないぞ」

美佳は携帯をスティックに持ちかえて、ステージへと向かった。

映画館のように、なだらかに下へと下がっていく階段。

その周りにある机の前には、軽音部の関係者達が早くも座っていた。

美佳は、視聴覚室の一番奥に設置されたドラムセットの中に入った。

見上げなければ、一番後ろの扉は見えない。


スティックを指で回し、叩くことなく、寸止めでタイコの配置を確認する。

問題はない。

あとは、演奏するだけだ。

美佳の神経が、ドラムだけに向けられた時、

後ろのドアが開き、総司と正利が視聴覚室に入ってきた。

もうすぐ最初のバンドの演奏が始まる。