恥ずかしさに思わず、逃げ出したくなったけど…足が動かなかったのは、

笑う片桐の様子に見とれていたからだ。

お腹を抱えて笑う片桐は、どう見ても…普通の高校生…いや、綺麗な高校生だ。


(こんな…片桐を初めて見た)

俺は、自然な姿の片桐を初めて見れたような気がした。

ずっと…見ていたかったけど、

昼休みが終わるチャイムが鳴り響いた。


片桐は何とか笑いを止めると、笑い過ぎて出た涙を指で拭った。

そして、歩きだすと、

「楽しみにしてるわ」

すれ違いざま、耳元で囁くように言った。


「う、うん…」

俺は、子供のように頷いた。


片桐の余韻に包まれて、

俺は教室に戻るのが、少し遅れてしまった。