美佳は嫌な胸騒ぎを感じながらも、ぎゅっと胸を抱き締めると、自分の予感を否定した。

ほぼ毎日かかっているのだから、好きになる人もいるだろう。


「そうよ…そうだ…」

美佳は、目で片桐の後ろ姿を追うのをやめた。


「絶対!」

自分に言い聞かせるように力強く言うと、美佳は歩きだした。

「単なる偶然」


心の底では、そう思っていない。

だけど、認めたくなかった。


だから、美佳は唇を噛み締めた。


(悔しい…)

心の中で、無意識に呟いた。

ジョリーって曲は、特別な曲だった。

太一と自分を繋ぐ。

あの晩…太一が感動したと、自分に語った曲こそ…ジョリー。

放送部の純一から、太一がよくかけていると聞いていたから、間違いない。

美佳は、ジョリーを叩く為に、ドラマーになったのだ。

自分の大切な絆を汚されたように、美佳は感じていた。