「この曲は…」

昼食を終えて、渡り廊下へと向かっていた片桐は、廊下の途中で足を止めた。

自然と微笑むと、

「また…あいつか」

また歩き出した。

歌詞は…悲しい曲のはずが、何だか心が弾んだ。

だけど、バックの美しいメロディが、心地よかった。

今、この学校で…この曲をいいと思ってるのは、

多分…あいつの自分だけ。

それが、嬉しかった。


笑顔を浮かべながら、廊下を歩いていると、

前から誰かが来た。

その子は、片桐に気付くと、少し足を止めたが、すぐに歩きだした。

そして、すれ違った後、凍りついたように足を止めた。

「え?」

すれ違った生徒は、振り返り…片桐の背中を見送った。