手を振る片桐に見送られながら、駅に帰る俺は、

軽くスキップを踏んでいた。

そんなことにさえ、自分では気付かない。

定期を通し、電車に乗り…最寄り駅の改札をくぐるまで、俺のスキップは止まらなかった。



「太一!」

改札の前に立つ…美佳に会うまでは…。


思わず足を止めた俺に、美佳はつかつかと近づいてきた。

この駅は、改札が一つしかない。

逃げる場所はない。

そもそも、どうして俺が、逃げなくちゃならない。

俺は足を止め、美佳の顔を見た。

力んで、少し睨むような目付きになっていました俺を、美佳は睨み付け、

「いつになったら、やるんだ!おれと音楽!」

とだけ…言った。