だけど、

だからといって、引きずっている訳ではない。

今は...ただ...。


前を向くと、俺を手を引く片桐がいることが嬉しかった。


公園を出ても、まだ引っ張る片桐は....怒りがおさまらないようで、

「何よ!あの男!馬鹿にして!」

まだ毒づいていた。

そんな片桐がおかしくて、俺は笑った。

「ありがとう。お陰で、すっきりしたよ」


「え?」

俺の冷静な言葉に、片桐は足を止めた。

そして、我に返ると、

俺の腕を離し、

「ご、ごめん!あたし...かっとなって」

顔を真っ赤にして、頭を下げた。

「いいよ!スカッとした」

「で、でも...今の人...前の彼女でしょ」

「いいよ。そんなこと」


本当に…今はどうでもいい。

俺は、狼狽えている片桐の腕を掴んだ。

「え」

そして、驚く片桐の目を見つめ、

「絶対、離さない」

と心に誓った。