心の裏側と素肌の境界線を越える為に

だけど、

それでいいわけがない。

俺は、片桐の背中に向かって言った。

「馬鹿だろ!」



「え?」

驚いた片桐が、俺を見た。

俺は片桐を軽く睨み、

「誰も傷つかないって…片桐!お前自身は、傷付いたままじゃないかよ!」


(畜生!)

俺は毒づきながら、前に出た。


そして、片桐の体を前に向かせると、思い切り抱き締めた。


「お前が…傷付いたままだろうが!」


そうだろ。

誰も傷つけない。

そんなことはがり考えて、

自分はどうでもいい。


そんなことがいいはずがない。

だけど…


そんな片桐が、

たまらなく、

愛しかった。