俺は夕陽を見つめた。



「ただ…大切にしたいと、自分勝手に思ったら、いけないんだよ。いっしょに考え、大切な人と考えながら、一歩一歩…進んでいくことが、一番大事なんだよ」

俺は、片桐に手を伸ばした。

「俺は…片桐を大切にしたい。だから、昨日のようなことで、始まるんじゃなくて…。ただ大切に思う気持ちから、始めたい」


「…」

片桐は目を伏せた。

「片桐…」



しばらく…無言の時が過ぎた。

でも、俺は待つ。


例え…夜が来ても。





「ありがとう」

やっと発せられた言葉は、涙とともにだった。

「だけど…あたしは、大切に思われる資格が…」


俺は、これ以上…言わせなかった。

片桐をぎゅと…思い切り抱き締めたからだ。