「いけね…」

家に着いた俺はベッドの上で、仰向けになりながら、 携帯を見つめていた。

「電源切れてる」

ため息をつくと、携帯をベッドの端に投げた。

「まあ…いいっか。こんな時間にかけてくるやつは、いないし」

昔の彼女は、寂しくなったら…夜中でも電話をかけてきた。

だから、電源を切らすことはしないようにしていた。

ずっと、その癖が抜けていなかったけど、

今は…取り急ぎ、かけてくるやつはいない。

総司や正利がかけてきたとしても、大した用でないだろう。


俺は自分の部屋の天井を見上げ、

「片桐が持っていたらな…」

深くため息をついた。


なんだろう…。

前と違い、

今回は…俺がかけたくて、たまらなかった。