…と、何度も思ったが、

片桐は死ぬことを選ばなかった。


いや、選ぶことはない。

浅はかな自分のせいで、

失った命があるのだから。


人はどうすれば…強くなれるのだろう。


痛みや傷や…悲しみを癒せる心があれば…強さと言えるのだろうか。


片桐は知っていた。


それは強さではあるが…そこに、幸せはないと。


なのに…今の自分は。

片桐は寝返りをうった。


穢れたと思いながらも、心のどこかで、温かさを感じていた。



「神谷…太一…か…」

不思議と、太一自身には嫌さを感じなかった。


そう…太一自身には。


もし…2人が、最初から…初めての出会いだったら…。


素直に幸せに感じたのだろうか。