いいわけがない。


俺は、唇から手を離した。

前で懲りたはずだ。

一方的に、気持ちをぶつけても、

2人の繋がりは太くならない。


俺は、片桐の為に何ができる。

彼女の救うことはできるのか。

そもそも…彼女の瞳の奥にある翳りは、どこから来た。

離婚したからか…。


それとも…。



電車の窓から流れる景色が、俺の瞳に映る。


だけど、それを脳が認識することはない。



最寄りの駅についた俺は、無意識に駅から降り、いつのまにか改札を通り過ぎていた



「おい!」

考え込んでいる俺の前に、誰かが飛び込んできた。

まるで、通せんぼをするかのように。