電車に乗り込んだ 俺は、そっと…唇に手を触れた。

遠ざかっていく風景から、片桐の住むアパートを探した。

しかし、見つからない。

体に微かに残る…片桐のにおいに、俺は少し安らいでいた。


だけど、

こうなった結果は、愛し合ったからではなかった。

俺は、好きになっていた。

さっきの行為で、さらに好きになるだろう。

でも、片桐は違う。

俺を慰めただけだ。


同じ瞳の色を宿す者として。


だとしたら…。



俺は、窓に映る自分の瞳を見た。


そうだとしたら…

俺は今のままでいいのか。

さっきのように、一方的に慰められて。