「あの!この後時間ありますか??」
「この後?」
「あ、別に変な意味じゃなくて、さっきのお礼にどこかでお茶でもご馳走します…あ、でもこれじゃあ逆なんなのかな??あれ?」
自分でも何が言いたいのかしどろもどろになり、ヤバイと思ったところで彼が返事をした。
「ごめんね。この後は用事があるんだ。」
「そ、そうですか…」
サラッと断られ、ショックを隠しきれない私に向かってその人は苦笑いを向けた。
「本当にごめんね。」
「いいえ、大丈夫です!あ、あの…私、山川桔梗(ヤマカワ キキョウ)って言います!!
良かったらお名前と連絡先聞いても良いですか?」
何が私をそうさせたのか分からなかった。
いつもは、人の様子伺って静かにやり過ごしたりするような私が、男の人に連絡先を聞くなんて…それでも、離れたくないと思ってしまった。
「ヤマカワ キキョウ……」
それから彼は、しばらく黙ってしまった。
「あ、ごめんなさい。断られたのにこんな事失礼でしたよね。じゃ、じゃあ。」
いたたまれなくなった私は、その場から離れようと彼に背を向けた。
