「あの、有り難うございました。」
「いいえー。」
「そのすいません。さっきは…」
「まあ、急に話しかけられたら変質者だと思われてもおかしくないよね?」
そう言ってその人は笑った。
寝癖なのかセットしているのか、ちょっとクシャっとした黒髪が風に揺れていた。
何となく大型犬を思わせるような人だった。
それと同時に、懐かしいようななんとも言えない感じに襲われた。
「あの…どこかでお会いしたことがありますか?」
「え?…それって逆なん??」
「え?!イヤイヤ違います!!そういう意味で言ったのではなく!」
「プッ、冗談だよ。面白いね君。」
その人が爆笑した姿を見て、何だか胸がキュウッとなった。
この感覚が何なのか、でも私はこの人とこれきりになりたくないと思い、気がついたら引き止めていた。