「ね、柴崎くん」
「なに?」
「緊張してる?」
「なんで?俺が?杏子は何度もうちに来てるのに?」
柴崎くんはいつも無表情な事が多いけど、私はその無表情の中でも柴崎くんの感情を察するのが上手くなった。交際歴1年以上は伊達じゃないね。
「1年も付き合ってたらわかるよ。珍しいね柴崎くん」
緊張している柴崎くんが可愛くて仕方がない。
「実は母さんが年末年始の海外旅行を福引で当てたもんだから、父さんと旅行に行っちゃって。今家に俺くらいしかいなかったから、俺も杏子と年末過ごしたいなって思って」
「2人っきりって夫婦みたいだね」
「それ!」
柴崎くんが立ち止まって少し大きな声で言った。
その頃にはもう既に私達は柴崎くんの部屋にいた。
「杏子が、そういうこと言うと、更に緊張するだろ」
「そう?」
「杏子と、こんなに長くいるのは初めてだから、なんかわからないけどドキドキしちゃって」
そう言う柴崎くんはドキドキどころかクラクラしていた。
顔色も悪い。