「ドッキリした?」


俺は思わずベッドから起きた。


「幽体離脱出来るなんて聞いてないって」

「賢斗くん」

「幽体離脱した上に喋れるなんて聞いてないし」


郁は驚く俺に甘い微笑みを向けながら近づいて行った。


「賢斗くん驚き過ぎだって」


郁はそのまま俺に近づいて、キスをした。

突然のキスに頭が真っ白になる。

郁の唇からわずかに郁の体温が伝わった。


「ほら、幽体離脱とかじゃないからキス出来るでしょ」

「あっ、はい」

「ウィーンから急いで帰ったの。賢斗くんと初詣にどうしても行きたいから」


郁はにこっと笑った。

キスをして、緊張していたのか頬が少し赤い。


俺は恥ずかしくなった。

寝起きだし、さっきまで白目だったし、郁の事ばっかり考えてて、今日の俺は本当にみっともない。


「バーカ」

「ごめんね、いきなりキスしちゃって」

「キスするなら、もっとロマンチックな所がいいだろ」

「え?」


俺はベッドから立ち上がった。

早く用意をしないといけない。


「初詣したら、色んな所に行くから。待ってろよ」

「ふふ、かっこつけちゃって」


用意が終わったら、初詣に行って、それからソラノキタワーでも登ろう。

あそこなら郁も気に入るだろうし、ロマンチックだと思う。


「賢斗くんの事、好きになってよかったよ」


郁の笑顔があれば、今年もいい年になりそうだ。