「着いた♪」
先輩が立ち止まった先には、綺麗な光を放つ電波塔があった。世間一般ではソラノキと呼ばれている。
まわりにはカップルが沢山いて、私はくすぐったい気持ちになった。
「ソラノキのカウントダウンイルミネーション、生で観たかったんだー」
「はあ」
「ひとりじゃ寂しいからね、暇そうなお前を誘った訳だ」
「だから掃除やってたんです!」
「ごめんごめん」
「でも、少しは楽しかったです。少しは」
「はいはい。ツンデレツンデレ」
「ツンデレじゃないですって!」
「ほら、もうすぐだよカウントダウン」
「もうこんな時間ですか」
カウントダウンイルミネーションの音楽が大きく鳴り始める。
「10、9」
私は先輩の後ろで握られてる手を見た。
「8、7」
何でだろう。好きでも無いはずなのにとってもドキドキする。
「6、5」
ふと先輩のズボンに目を移すとポケットにスマホが入っていた。
「4、3」
スマホには、先輩が私にくれたものと同じストラップが付いている。
「2、1」
あんな本人は付けないような可愛い物を、なんで付けてるんだろう。
「明けましておめでとう。後輩」
先輩は後ろの私に振り向いた。
先輩の柔らかい笑顔に私はまた心を奪われそうになった。
「今年も、よろしくお願いします」
今年も先輩のせいで、色々困惑しそうな予感。