ドラムショップを出ると先輩は駅とは違う方向に向かって歩き始めた。
私はとりあえず先輩に着いていく。
「先輩?どこ行くんですか?」
「落ち着きたまえ後輩よ」
「勝手に別の方向向かわれたらそりゃ取り乱しますって」
ドラムショップ周辺は有名な観光街なだけに、それに大晦日なだけに、人が溢れるようにいた。
私は先輩からはぐれないように、先輩のコートの裾を掴む。
「コート伸びるからやめてよ」
「すっ、すいません」
先輩はそう言うと、コートから私の手を外し、その手を握った。
「お前の手、離さないから」
先輩はそう言うと歩く速度を早めた。
胸の辺りが苦しい。
これは久々の胸きゅん。
私は緊張や、ドキドキで声が出なくて返事すら出来なかった。