ラテンパーカッションコーナーに入る直前、スマホに電話が入った。
「先輩?」
ラテンパーカッションコーナーに入り、ボンゴを眺めながら電話に出る。
「もしもし?」
『ドラムセットコーナーに来い』
「どうしてです?ラテンパーカッションコーナー来たばっかなんですけど」
『もう買うもの決めたから』
「はあ」
私は入って間もないラテンパーカッションコーナーから離れてドラムセットコーナーに向かった。
「遅いぞ後輩よ」
「呼んでおいてそれですか先輩」
「ちょっとこれ聞いてよ」
先輩は嬉しそうにペダルを踏み、バスドラムを叩く。
スーッと突き抜けるような真っ直ぐな音が鳴った。
「いい音でしょ。この前一目惚れした子」
「へーえ。いいですね」
バスドラムに対して嫉妬するような私じゃない。
それにほんとに素敵な音だった。
でもラテンパーカッションコーナーをロクに見せてくれなかった先輩に対して少し腹が立っていた。
「じゃ、買ってくる」