バスドラム。大太鼓とも言うバスドラム。
ペダルを踏んで音を出すドラムセットの中で一番大きいパーツだ。そしてかなり重要!
それに、大きくて重い。
先輩は私を荷物持ちにする。そんな狙いが最初からバレバレだった。
「5点だな」
「これは7点満点中ですか」
「√100点満点中かな」
「るっ、ルートですか」
急いで着替えた私の私服を採点する先輩。
なんであんな人を好きになっていたのか、わからなくなってきた。
「それで、私は先輩がお買い上げになったバスドラムを運ぶために呼ばれたんですよね」
「さあね、そうかもしれないし、年越しデートかもしれない」
先輩は少し伸びた黒髪を冬の風になびかせながら不敵に微笑んだ。
先輩がドヤ顔しながらくいっと上がる黒ブチ眼鏡が憎い。
そんな調子で地下鉄に乗って、2回くらい乗り換えをして、ドラムショップに着いた。