「泣いてなんかっ…」
















あたしが何か言い返そうと言葉を発したその時――































あたしの頬に何か触れた。


一瞬何か分からなかった。























――それは嵐の手だった。



あたしの涙を手で拭ってくれている。



『……………嵐……??』



嵐の顔を見上げる。



嵐と目が合う。



その表情は記憶を失う前あたしを見ていたときと同じ、


…優しい表情。



「………つっ…!!!!」



嵐がいきなり頭を押さえた。



これは、記憶が戻りかけてるの……??!!



『嵐っ!!!!』



あたしの呼び掛けを聞いた嵐はまたあたしを見た。



「………………帰れ。」



















………帰れ??


帰れだと???!!!



何だし!!

てっきり記憶が戻ったのかと思ったのに!!!!



『…………ふんっ!!!!』



あたしは嵐をそのままその場に残してさっさと家の中に入った。



























一方、嵐は自分のとった行動に驚きを隠せなかった。



何故自分がああしたのか分からない。





無意識に菜子の頬に手が延び、気付いたときにはもう涙を拭っていた。













何故…





どうして――…??





一体あの人は自分の何なのだろうか……。