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きちんと私は、彼の要望に応えられているだろうか。
衣食住全ての面倒を見てくれる彼は、半ば、私の雇い主。
雇い主である反面、顧客でもある。人身売買の意はないが、彼が私のために大切な財産を使っている事実は拭えない。
彼がいない間、家のことは全て成し遂げてはいるが、毎回同じ事の繰り返しではリピーターとなってくれない。人は飽きを抱ける生物だ。いかにして、顧客の心を掴み、更には雇い主を納得させる物を仕上げるか。
新しくかつ、斬新な物を。だが、時代の最先端を担うのはごく一部の成功者のみ。下手な案を出し、多大なる損害を出すことの方が確率としては高いだろう。
あえて使い古された物を取り入れるのも一つの手。ある事例で、30色はあるTシャツを置き、消費者に好きな物を選べと指示を出せば、大概の消費者が白か黒のどちらかを選ぶという。
『無難』。これに尽きる。どんな彩りの斬新なカラーがあったとしても、人は使い古された色に落ち着きを覚えてたどり着く。
ならば、やはり、私がすべきことは、使い古された物にわずかなりの新鮮さを加えることだーー
「おかえりなさい、あなた。わたしにする?わたしにする?それとも、わ、た、し?」
「だから、真っ赤な顔をしてやらなくてもいいよ」
※でも、彼はまんざらでもない顔をしていました。


