アオイを見ると彼女がうなずいたので、俺は「お願いします」と答えた。実はオーダーのときにデザートを選ぶ際、俺はわざとアオイと違うのを頼んだのだ。「アオイの、うまそうだな。食べていい？」とか「俺のを味見してみる？」とかさりげなく言って、彼女との仲を深めようと考えたのだ。そんな小細工を労しているなんてアオイに知られたら恥ずかしいけれど。

　ほどなくしてデザートが運ばれてきた。アオイのは濃厚プリン、俺のは特製ブランマンジェのベリーソース。

「わあ、おいしそう！」

　アオイが目を輝かせて濃い黄色のプリンにスプーンを入れた。ぷるんと揺れたそれと白いクリームをすくい取って彼女が口に入れる。

　ああ、俺もプリンになりたい。なんて。

「おいしい？」

　俺の問いかけに、彼女が満面に笑みを浮かべる。

「うん、すごく！　コウタのもおいしそうだね」

　よし、ここまでは計画通り。俺は前のめりになりそうな気持ちをなだめながら、さりげなさを装って言う。

「うん、うまいよ。食べてみる？」

　だが、返ってきたのは予想外の返事。

「え、いいよ。そんなの悪いし」

　俺は心の中でがっくりと肩を落とした。

　悪くないのに。ぜんぜん悪くないのに。