キミの心を奪いたいんだ。

「そっか。あの広いピッチを縦横無尽に駆け回るタツキとはぜんぜん違っただろ」

 俺の膝じゃ持たないから。自嘲気味に言って俺は視線をそらした。情けないな、乗り越えたはずなのに。

「ねえ」

 アオイの声に俺は彼女の方を見た。

「何?」
「彼女って言ってくれていいのに」

 アオイの言葉の意味がわからなくて、俺は小さく首を傾げる。

「だって、私、コウタの彼女でしょ? さっきの子に恋人だって言ってくれていいのに」
「アオイ……」

 彼女が頬を染めながら言う。

「コウタはコーチに向いてるよ。厳しいことを言ってもそれは感情的な言葉じゃなくて、ちゃんと子どもたちを思っての言葉だってわかる。きちんとフォローもして、子どもたちを落ち込んだままにしないもの。いいコーチだなって思う。私が母親でも、コウタを信頼して子どもを預けたいなって思うよ。そんなコウタを私はすごいなって思う。みんなに自慢したいくらい」
「そう言ってくれて……嬉しいな」

 俺は気恥ずかしくなって、後頭部を搔いた。

「ね、また見に来てもいい?」

 アオイの言葉に俺は目を見開いた。俺が過ごす時間を共有したいと思ってくれているんだろうか。