「兄貴たちに晴れ姿見せに来たんじゃなかったのかよ…」
「違うよ。
……シンタくんに見せに来たんだよ」
私の言葉に少し困ったような様子をみせながら、シンタくんは帽子を脱いでガシガシと頭を掻いて
「それはありがたいんだけどさ…。
千波、もうここには1人で来るなよ?」
「なんでー?!」
思わず大きな声が出てしまって、慌てて首を竦める。
バックヤードといっても店内に繋がっているのだから、私の声は筒抜けだ。
シンタくんは、そんなことは気にしていないようで何かを思案しているようだったが、やがて私の顔を覗き込むようにしてゆっくりと話し始めた。
「あのね?
さっきのことでも分かるだろ?
ここは君みたいなお子さまが1人で過ごすトコじゃないの」
「そんなー。私だってもうお子さまじゃないよ」
私は必死に食い下がる。
せっかくそばに来て、やっと好きなだけ会いに来れると浮かれていた私に、シンタくんの言葉は到底受け入れられない。

