「今日は金曜だし?
時間はたっぷりあるから何処か行かない?」
これ以上詰まるわけのない距離をさらに詰めようとされて、私は自分のスツールから落ちそうになる。
その私の肩を支えるようにしながら立たせてスーツマンから引き離してくれたのは、いつの間にかやってきてくれたシンタくんだった。
「田代さーん。ナンパは禁止。
こいつはダメですよ。僕のですから」
「えー?マスター客には手を出さないんでしょ?
彼女がその気になれば問題ないじゃない」
ならないよ!
怒鳴ってやろうと思ったけど、その前に
「こいつは客じゃありませんから」
シンタくんは私の手を引いて、バックヤードに私を引っ張っていった。
「ちょっと……!」
不服そうな田代さんと呼ばれた男性に鈴木さんたちが
「あの子、マスターの妹で未成年ですよ」
と言っているのが聞こえた。

