「ね、あの子はお客さん?」
ショートカットの方のお姉さんがシンタくんに尋ねる。
「あー、妹ですよ」
サラッと答えるシンタくんにまた傷つきそうになったけど、途端に二人組の態度が変わる。
「え?妹さん?!」
「シンタくん妹もいたんだ」
あっさり消滅する敵意。
私は、遅ればせながら気付く。
この人たちはシンタくんが好きなんだ。
だから、妹だと聞いたとたん態度を豹変させるんだ。
私は、敵に回すべき相手じゃなくて味方につけるべき相手だと判断したんだろう。
分かりやす……。
でも、シンタくんが妹だと言ってくれて助かったかも。
「シンタくんって何人兄弟なのー?」
その質問にはいつも通り微笑みだけで答えないシンタくんを確認してから、私は小さく会釈しながら視線を正面に戻した。
それから立て続けにお客さんが入ってきて、満席とまではいかないけど店内は賑わっていってシンタくんは忙しそうに動いていた。

