「さてと……」
シンタくんがカウンターの一番端から店内に出てきて、私の右隣のスツールに座った。
「まだもう少し時間があるから聞かせてもらおうか」
「何を?」
「んー、千波の高校生活の思い出話とか?
せっかくさっき色々思い出したんだからさ、ひとつくらい聞かせろよ」
何よそれ。
「……そんなもの聞きたいの?」
「まぁ、暇だし?」
「ひどっ。人の大切な思い出を暇潰しにする気?」
「いいから聞かせてよ。一番ドラマチックなやつ」
そんなこと言われても……。
私はゴールドのピンに刺さったイチゴを弄びながら、何を話せばいいのか思案した。

