「お前の来るのが早すぎるの」
シンタくんはそう言いながら自分のグラスを傍らに置いて、私の前から空のグラスを引き上げる。
「まだ19時にもならないでしょ。
こういうお店に人が来るのはもう少ししてから」
喋りながら冷蔵庫や背後のお酒が並べられた棚からいくつかの瓶を取りだし、慣れた手つきで分量を計りながらシェイカーに液体を入れていく。
「ご心配頂かなくても、最近はそこそこ儲けさせてもらってます」
表面が白く曇るシェイカーをそっと持ち上げてリズムよくシェイクする。
ヤバいくらいにカッコいい…。
深めに被ったキャップのせいで顔はよく見えないけど、伏せた目線やキュッと一文字に結ばれた唇、シェイカーを支える綺麗な指先に私の心拍がまた上昇を始める。
「嘘だぁ。儲かってるようには見えないよ」
憎まれ口を叩きながらも私はソワソワしっぱなしだった。

