「分かった?俺の言いたいこと」
再び背中を向けて手を動かしながらシンタくんが言った。
「よほど印象的なエピソードとか派手なシチュエーションがないとドラマチックじゃない、なんて言ったら勿体ないってこと」
そして、出来上がったらしい翡翠色のお皿を手にして振り向き
「だからね――」
私の前に湯気が勢いよくあがるお皿を置いて、さっきよりもグッと身を乗り出す。
「だからね、難しいこと考えないで、ただ目の前のことを一生懸命楽しみなさい。
ドラマチックは、後からついてくる」
顔と顔を付き合わせたごく至近距離で、
シンタくんは最高に美しいウインクを決めてみせた。

