「ご、ごめんっ……」
泣いている日吉にそっと声をかけたら、びっくりしたように真っ赤な目を見開いて両手でわたわたと涙を拭う。
自分で泣いている自覚がなかったみたいに。
「も、もうさぁー、いきなりこんな懐かしい景色見せないでよ。
私、自分でも気付かなかったけど、かなりホームシックだったみたい。
確かに千波湖は、私にとって特別な場所だし?
不意打ち過ぎて泣けちゃったよ。
カイチくんずるいっ!」
目一杯の明るさを装って、日吉は俺の左手を叩く。
本当にそれだけ?
意地悪く聞いてしまおうかと思った。
ほんの一瞬だけ。
でも、そんなことしたら一番惨めになるのは俺の方。
俺の脳内で大きな白旗がはためいた。

