「美味し……」
一口飲んで呟いた私にシンタくんがクスッと笑う。
「今日は甘くない、って言わないんだ?」
「うん。だって……」
カクテルはいつも通り柑橘系の香りが爽やかで甘さはかなり控えめ。
だけど、今日は甘く感じるんだ。
この幸せすぎる展開のおかげで。
そんなこと言葉にはできないから、私から別の質問を口にする。
「シンタくんも同じカクテル飲んでるの?
ノンアルコール?」
「そうだよ。
今夜は大事な夜だからね。禁酒は必須でしょ?」
事も無げに言ってグラスを手にするシンタくんに対して、私は顔を赤くして俯いてしまう。
そうだった……。
『丸1日独り占め』っていうことは、このまま夜を一緒に過ごすってことなんだ…。
夜を一緒に……。
「千波……。お前、何考えてるの?」
完熟トマトも敗北宣言しちゃいそうなくらい真っ赤になった私を覗き込むようにしてシンタくんがからかう。
「べ、別にっっ」
ブンブンと首を振ってからカクテルを多めに口に含んだ。
冷たいカクテルが食道を落ちていく感覚でやっと少し冷静になれた。
「あ…、そういえば」
私は1つ心に浮かんだ疑問を思い出して、シンタくんに向き直る。

