「お待たせしました。
"千波スペシャル" ……です」
私の前に置かれたのは、シンタくんが私のために考えてくれたオリジナルカクテル。
誕生日の時と同じようにミントの葉を浮かべたカクテルはダウンライトの光を反射させてキラキラ輝いていた。
シンタくんはもう1つ同じカクテルの入ったグラスを私の右隣に滑らせると、カウンターから出てきて私の横にそっと腰をおろした。
「はい。乾杯しよ?」
右側からなんとも色っぽい微笑みと共に差し出されたグラスに私も慌てて自分のグラスを持ち上げる。
チリン……。
涼やかな音が2人きりの店内にやけに響いて聞こえた。
優雅な仕草でシンタくんがグラスを口に運ぶ。
ライトの下で艶やかに輝く黒髪。
男性にしては色白ですべすべの肌。
横からでもはっきり分かる長い睫毛。
いかにも繊細そうで美しい指先。
……私、この姿100万年眺めていられるかも。
シンタくんから目が離せない。
「……あのさ、なるべく早く飲んであげてね?
温くなっちゃうから」
苦笑いを浮かべたシンタくんに小突かれて、漸く我にかえった私は急いでピンク色のグラスを口に運んだ。

