「というわけで…」
シンタくんがすぐそばのドアノブに手をかけた。
そこはバックヤード。
私にとっては大切な思い出の場所でもある。
「ここを千波用に改装したから。
これからは好きな時に店に来ていいよ。
店が混んでたらここで俺のこと待っててくれない?」
開け放されたドアの向こうに私は息をのむ。
それまではシンタくんが休憩したり、
落花生や常温保存の食料を置いておいたり、
どっちかといえば事務所みたいで雑然としていた場所がすっかり生まれ変わっていた。
座り心地のいいソラマメ色のソファやノートパソコンが置かれたシステムデスク。
洋服をかけるためのシェルフなど元から置かれていたものは変わっていない。
だけど、ソファの上には可愛くて肌触りも良さそうなスモークピンクのクッションと膝掛けが置いてあった。
システムデスクの上には綺麗なガラスの一輪挿しが置かれ今はオレンジ色のガーベラが飾られている。
シェルフの横には同じナチュラルウッドの素材で出来たローデッキが新たに置かれて、その上には14インチテレビが鎮座していた。その横にはご丁寧にヘッドフォンまで。
そして落花生や常温保存の食料たちはどこにも姿がなく、スッキリと整頓されたその場所はバックヤードと呼ぶには勿体ないほど居心地の良さそうな『部屋』になっていた。

